なかなか売れないマンション三十二歳で家を持つことの困難さ

大工さんたちの仕事も減っていたから、休んでいるよりはましと、喜んで引き受けてもらえた。建材業者さんも、仕事が少ないのは同じこと。何しろ不況で、高級バーの改装工事など、おいしい仕まさめむく事はまったく入ってこなかったのである。そのおかげで、柾目のチーク材や無垢の桜材、無垢の桧など、普段だったら高級住宅やナイトクラブのカウンターにしか使われないような掘り出し物の材料もふんだんに使うことができた。だから、これは依頼主も大満足だ。ふしぎなもので、住まいがきれいになると、人に見てもらいたくなるものらしい。そこで依頼主に頼んで、できるだけ同じ間取りの人たちに見てもらうようにする。つまり、同じマンションの中に完成品のモデルルームがあるようなものである。おかげで、ずいぶんたくさんのご依頼をいただき、オイルショック下の不況を何とか乗り越えることができたわけである。そうそう、その後、例の新聞記者さんは、「若手建築家集団が日本住改善委員会を結成、アンケート調査でマンションの住みにくさ、欠陥ともいえる不備を洗い出し、増改築を提案」と、大々的に取り上げてくれたのである。当時はまだリフォームという言葉さえなく、計らずも私たちがこの増改築ブームのさきがけとなったのである。かくして日本住改善委員会はすでに二十三年を迎える。■なかなか売れないマンション三十二歳で家を持つことの困難さ。

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